パソコンの画面が、だんだん散らかってくる。
アイコンが増えて、どれが何だか分からなくなる。分からなくなると、探すのに時間がかかる。探すのに時間がかかると、パソコンを開くのが億劫になる。
だから私は、ときどき片づける。
今回片づけたのは、画面の「一番下の段」。あの、いつも横一列にアイコンが並んでいる細長い帯のことだ。名前を知らなかったが、タスクバーというらしい。
たった30分の片づけだったが、69年生きてきて初めて知ったことが、いくつもあった。
■ 第1章 「消したら、アプリごと消えるんじゃないか」
きっかけは、AIのアプリだった。
私はAIのClaude(クロード)というアプリを毎日使っている。これまではデスクトップ(机の上のような、あの広い画面)にアイコンを置いていたのだが、今回タスクバーのほうにも置くことができた。
同じアイコンが二つある状態だ。
「じゃあ、デスクトップのほうは消していいよね」
そう思ったものの、指が止まった。消したら、アプリそのものがパソコンから消えてしまうんじゃないか。そうなったら、また一からやり直しである。
AIに聞いてみた。答えはこうだった。
デスクトップにあるのは「ショートカット」といって、いわば近道の案内看板。看板を外しても、建物そのものは残っている。
アイコンの左下に、小さい矢印マークが付いていたら、それが「これは看板ですよ」という目印なのだそうだ。
見てみたら、たしかに付いていた。二年以上毎日見ていた画面なのに、初めて気がついた。
■ 第2章 デスクトップと、下の段は「別物」
もうひとつ心配だったのが、デスクトップのアイコンを消したら、下の段のアイコンまで道連れになるんじゃないか、ということ。
これも大丈夫だった。
下の段に置くことを「ピン留め」という。画鋲で留めるイメージだ。ピン留めは、デスクトップのショートカットとはまったく別に登録されている。だから片方を消しても、もう片方は平気で残る。
安心して、デスクトップのアイコンを右クリック、「削除」。
ちなみに削除といっても、いったんゴミ箱に入るだけ。もし間違えても取り出せる。この「取り返しがつく」という一言があるだけで、ずいぶん指が動きやすくなる。
■ 第3章 使っていないアプリに、出ていってもらう
勢いがついたので、ついでに下の段も整理することにした。
並んでいたのは八つほど。そのうち三つは、正直まったく使っていない。メールソフト、AIのアシスタント、それから他のパソコンを遠隔で操作するソフト。
やり方は簡単だった。
アイコンを右クリックして、出てきたメニューの下のほうにある「タスクバーからピン留めを外す」をクリックするだけ。
これもアプリが消えるわけではない。使いたくなったら、左下のWindowsマーク(スタートボタン)から探して、また留め直せばいい。
三つとも、すっと消えた。気持ちがいい。
■ 第4章 パワポだけ、追い出せない
ところが、一つだけ言うことを聞かないやつがいた。
PowerPoint(パワーポイント)である。
右クリックしても、「タスクバーからピン留めを外す」が、どこにも出てこない。何度やっても出てこない。
私はてっきり、自分のやり方が間違っているのだと思った。押す場所が違うのか、順番が違うのか。
その画面をそのままAIに見せたら、返ってきた答えに、思わず声が出た。
「パワポは、もともとピン留めされていません」
どういうことか。
パワポは、そのとき私が開いて使っていた。開いているアプリは、ピン留めしていなくても、その間だけ下の段に顔を出す。つまりパワポは「住人」ではなく、たまたま来ていた「お客さん」だったのだ。
住んでいない人に「出ていってください」とは言えない。だからメニューにも出てこない。
証拠は、私が撮ったスクリーンショットの中にちゃんと写っていた。右クリックで出たメニューに「タスクバーにピン留めする」と書いてあったのだ。それは「この人はまだ住んでいませんよ」という意味だった。
パワポを閉じたら、アイコンは何もしないのに消えた。
■ 第5章 見分け方は、足元の細い線
住人とお客さんは、どうやって見分けるのか。
アイコンの下をよく見ると、細い線が引いてあるものがある。あれが「いま開いていますよ」の印なのだそうだ。
線があれば、今動いている。線がなければ、留めてあるだけで待機中。
言われてみればずっとそこにあった線なのに、意味を知らずに何年も眺めていた。パソコンというのは、こういうことばかりである。
■ まとめ ― 分からないのは、自分のせいとは限らない
片づけが終わった画面を見て、しみじみ思ったことがある。
パワポが外せなかったとき、私は「自分のやり方が悪い」と思い込んでいた。ITのことになると、うまくいかない理由をつい自分の腕前のせいにしてしまう。
でも実際は、そもそも外す必要がなかっただけだった。
分からないときは、消したり押したりする前に「これは何者なのか」を確かめる。それだけで、無駄な格闘がひとつ減る。AIに聞くときも「どうやるの?」ではなく「こういう画面になっているんだけど」と今の状況をそのまま見せたほうが、答えが早い。
そして片づけの本当の効果は、画面がきれいになることではないと思っている。
どこに何があるか自分で分かっている、という状態。あの安心感が、次にパソコンを開く一歩を軽くしてくれる。
69歳。まだまだ、家の中の整理も、パソコンの中の整理も、途中である。
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